「マーケティングを強化したいが、どんな組織を作ればいいかわからない」「一人マーケから脱却したいが、採用や役割分担の基準がない」「施策はやっているのに成果が出ず、組織の問題なのか戦略の問題なのか判断できない」――こうした悩みは、成長フェーズの企業のマーケティング担当者・経営者に共通して起きやすい課題です。マーケティング組織とは、マーケティング機能を組織として機能させるための人員・役割・権限の設計であり、事業フェーズや戦略に応じて最適な形が異なります。本記事では、マーケティング組織の主な形態・立ち上げ手順・フェーズ別の考え方・よくある失敗パターンを実務目線で解説します。

マーケティング組織の主な形態

マーケティング組織には複数の形態があり、事業規模・戦略・チャネルの複雑さによって適切な形が変わります。代表的な3つの形態を整理します。

① 職能別組織(機能別)

職能別組織とは、SEO・広告・SNS・コンテンツ・分析といった機能(職能)ごとにチームを分けた組織形態です。マーケティング組織の中で最も一般的な形であり、専門性を高めやすいのが特徴です。

  • メリット:各機能の専門スキルが蓄積しやすい。同じ機能のメンバーが集まるため知識共有がしやすい
  • デメリット:機能間の連携が取りにくくなりやすい。施策が縦割りになり、顧客体験が分断されるリスクがある
  • 向いている企業:単一事業・単一ブランドで、機能の専門性を高めたいフェーズの企業

② 事業部別組織

事業部別組織とは、事業ライン・ブランド・地域ごとにマーケティング機能をセットで持つ組織形態です。各事業部が独立してマーケティングを動かせるため、意思決定が速いのが特徴です。

  • メリット:事業ごとの市場・顧客に合わせた施策を打ちやすい。事業責任者とマーケティングが近い距離で動ける
  • デメリット:事業部間でリソースが分散しやすい。ブランドの統一感が出にくくなるリスクがある
  • 向いている企業:複数事業・複数ブランドを持ち、事業ごとに市場特性が異なる企業

③ プロジェクト型・スクラム型

プロジェクト型・スクラム型とは、特定のプロジェクトや目標に合わせて機能横断のチームを編成し、期間限定で動く組織形態です。スタートアップや新規事業フェーズで採用されることが多いです。

  • メリット:目標に集中した動きができる。機能横断で動くため施策の一貫性が保ちやすい
  • デメリット:プロジェクト終了後のナレッジ継承が難しい。複数プロジェクトが並走すると人員管理が複雑になる
  • 向いている企業:新規事業の立ち上げ期や、スピードを優先するスタートアップ

マーケティング組織の立ち上げ手順

マーケティング組織を立ち上げる際は、いきなり採用・体制構築から入るのではなく、まず「何のために・どんな組織が必要か」を整理することが重要です。

① 事業フェーズと必要機能を整理する

最初のステップは、現在の事業フェーズと、マーケティングに求められる機能を明確にすることです。事業フェーズによって優先すべきマーケティング機能は大きく異なります。

  • 認知獲得フェーズ:広告・PR・SNS・コンテンツマーケティングが優先される
  • リード獲得・育成フェーズ:SEO・ホワイトペーパー・メール・MAツール運用が中心になる
  • 既存顧客の維持・拡大フェーズ:CRM・カスタマーサクセス・LTV向上施策が重要になる

必要な機能を洗い出したうえで、「内製すべき機能」と「外部に委託すべき機能」を判断します。

② 責任者(マーケティング責任者)を決める

組織を機能させるうえで、マーケティング全体の責任者を最初に決めることが最も重要なステップです。責任者不在のまま機能別に担当者を置いても、施策がバラバラになりやすく、PDCAが回りません。

マーケティング責任者に求められる役割は以下の通りです。

  • 戦略策定:事業戦略を受けてマーケティング戦略を設計する
  • 予算管理:マーケティング予算の配分・管理・効果検証を行う
  • チームマネジメント:メンバーの採用・育成・評価を担う
  • 経営との連携:マーケティングの成果を経営指標に接続して報告する

社内に適任者がいない場合は、外部CMOや顧問マーケターを活用して責任者機能を補完するという選択肢もあります。

③ 内製・外注の役割分担を設計する

すべての機能を内製する必要はありません。「戦略・判断・ナレッジ蓄積が必要な機能は内製、実行・制作・運用は外注」という切り分けが基本的な考え方です。

機能内製向き外注向き
戦略・企画○(自社の強みや顧客理解が必要)△(外部CMO活用は有効)
コンテンツ制作○(専門知識・ブランドボイスが必要な場合)○(量産・汎用コンテンツは外注可)
広告運用○(インハウス化でコスト削減・PDCAが速くなる)○(初期・リソース不足時は代理店活用)
データ分析○(意思決定に直結するため内製が理想)△(ツール導入支援は外注可)
デザイン・制作△(ブランド管理担当は内製が望ましい)○(制作実務は外注が効率的)

④ KPIと評価基準を設定する

組織として機能させるためには、マーケティングの成果を測るKPIと評価基準を事前に設定することが不可欠です。KPIが曖昧なまま動き始めると、何を優先すべきかの判断軸がなくなり、施策の評価もできません。

  • 上位KPI(事業指標):売上・新規顧客数・LTV・解約率など事業成果に直結する指標
  • 中間KPI(マーケティング指標):リード数・商談化率・CVR・CAC(顧客獲得コスト)など
  • 施策KPI(チャネル指標):セッション数・インプレッション・クリック率・開封率など

上位KPIから逆算して中間KPI・施策KPIを設定することで、施策の優先順位と評価基準が明確になります。

フェーズ別の組織設計の考え方

マーケティング組織は、事業フェーズによって最適な形が変わります。現在のフェーズに合わせた設計が重要です。

  • スタートアップ初期(〜10名規模):マーケティング専任を置かず、代表やPM兼務でスタートするケースが多い。まず「誰がマーケティングの責任を持つか」を決め、外部パートナーと組みながら最低限の仕組みを作ることが優先。
  • 成長期(10〜50名規模):マーケティング責任者を置き、機能別に1〜2名ずつ採用していくフェーズ。広告・SEO・コンテンツなど優先チャネルから順番に内製化を進める。外注との役割分担を明文化し、ナレッジを社内に蓄積することが重要。
  • 拡大期・大企業(50名以上):機能別組織または事業部別組織として体系化するフェーズ。機能間の連携・横断プロジェクトの設計・マーケティングデータの一元管理が課題になる。COE(センター・オブ・エクセレンス)など全社横断の機能を設けるケースもある。

よくある失敗パターン3選

① 責任者不在のまま人員だけ増やす

マーケティング責任者を置かずに、広告担当・SNS担当・コンテンツ担当を個別採用するパターンです。責任者不在では戦略の統合ができず、各担当が個別最適で動くため、施策がバラバラになります。まず責任者を決め、その下に機能を積み上げる順番が重要です。

② 外注依存のまま内製化のタイミングを逃す

代理店・フリーランスへの外注が定着し、社内にマーケティングのナレッジが蓄積されないパターンです。外注は初動・リソース補完として有効ですが、戦略・データ・顧客理解は内製化していかないと、組織としての判断力が育ちません。外注範囲の定期的な見直しが必要です。

③ KPIが施策指標だけで事業指標に繋がっていない

「セッション数が増えた」「フォロワーが増えた」という施策レベルの指標だけを追い、売上・リード数・CVRなどの事業指標との接続が曖昧なパターンです。マーケティングの成果は最終的に事業指標で評価される必要があり、施策KPIは上位KPIから逆算して設計することが重要です。

よくある質問

Q. マーケティング組織は何人から作れますか?

A. 1人からでも作れます。重要なのは人数よりも「誰がマーケティングの責任を持つか」を決めることです。まず責任者を明確にし、外部パートナーと組みながら機能を補完する形でスタートするのが現実的です。

Q. 広告代理店に任せているのに、社内にもマーケティング担当が必要ですか?

A. はい、必要です。代理店は施策の実行を担いますが、戦略の判断・予算配分・効果検証・社内調整はあくまで発注者側の役割です。社内に判断できる人材がいないと、代理店任せになり施策の質が上がりません。

Q. 外部CMOとマーケティング責任者の採用、どちらを先にすべきですか?

A. 採用に時間がかかる場合や、まず戦略の骨格を作りたい場合は外部CMOの活用が有効です。外部CMOが組織設計・採用基準・KPI設定まで整えたうえで、内製の責任者に引き継ぐという流れも現実的な選択肢です。

まとめ ― 組織の形より「責任者を決める」ことが最初の一歩

マーケティング組織の作り方を改めて整理します。

  • 組織形態:職能別・事業部別・プロジェクト型の3つが主な形態。事業フェーズと戦略に合わせて選ぶ
  • 立ち上げ手順:必要機能の整理→責任者の設置→内製・外注の設計→KPI設定の順で進める
  • フェーズ別:初期は兼務+外部パートナー、成長期は内製化、拡大期は体系化が基本の流れ
  • よくある失敗:責任者不在・外注依存・施策KPIだけの評価の3つに注意する

マーケティング組織づくりで最初に取り組むべきことは、組織形態の設計より「誰がマーケティングの責任を持つか」を決めることです。責任者が決まれば、戦略・採用・外注・KPIの設計が一気に進みます。自社のフェーズと課題に合わせて、まず責任者の設置から着手してみてください。